2020年5月31日日曜日

死亡診断書の病名は「あいまい」な点が含まれている

コロナ死亡率に変動を与える因子はいろいろ述べられています。中でも、今までのところの日本人におけるコロナ死亡者率のけた違いの少なさには内外から注目されています。日本にコロナ死亡者が少ない理由に、人種差・免疫力の差(BCGワクチン・食生活)・清潔志向の差などが挙げられていますが、それらの個々は、いくらそれらしいと思っても、実は仮説の段階のものです。つまり、何もはっきりしたことは分かっていないのです。真面目な気持ちから出たにせよ、報道やネットでの情報は「言いたい放題」の状況でもあります。僕自身も、「日本以外の多くの国における貧富の差、衛生状態の格差と医療の機会の格差」が主な死亡率の多さの原因だという議論をしていますが、それも同じことです。
ただ、長らく日本の生活が当たり前の僕たちは、むしろ、日本以外の多くの国における貧富の差の大きさと衛生状態の格差と医療の機会の格差のいずれもが大変大きいことを認識する良い機会だと思います。

ところで、「死亡診断書における死亡病名」はそんなにはっきりしたものか?ということを述べておきます。
普通の風邪でもインフルエンザ(インフル)でもコロナでもそうなのですが、一般に、亡くなった場合の「死亡原因は何か」というのは簡単ではありません。高齢であることや一般状態がもともと悪かったとかの原因になりうる事項が複数ありうるので、どれが一番大きい原因(それも場合によっては同定しにくいことがある)かがスパッとわかるものとも限りません。それで、インフル死亡者という言い方よりもインフル関連死亡者という慎重な言い方が特に医学雑誌や医療論説などで用いられることになるのです。コロナでも同じことです。

僕は大学病院と基幹病院で数多くの死亡診断書を書いてきましたが、有床診療所でもそうでした。後者では、死亡時に「直接死因」の病名が次第に書きにくくなるような状況が増えてきました。それは高齢者や超高齢者が入院中に死亡される時に、しばしば「老衰」というのが一番真実に近いということでした。敢えて病名というと、結局は「心不全」が近いというものでした。ところが、「老衰」は病名ではないということだし、「心不全」という死亡診断はなるだけ書かないように推奨されていると承知していましたので、頭を捻ることになりました。「心不全」が駄目なのは、死亡判定自体を実際上は心停止で決めてしまうことが多いので、すべて「心不全」ということになることとの整合性が悩ましいからだということでしょう。

例えば、Aさんの死亡診断書には、「直接死因欄」に「急性呼吸不全」ということを記入した場合にも、「付記欄」に「実際は、老衰と思われる状況でした」ということをよく書きました。Bさんの場合は「直接死因欄」に「急性循環不全」と記入してその罹患期間を「半日」とか記入して、「その原因欄」に「加齢による慢性心不全」でその罹患期間を「3年」くらいの記載をしたことがありました。(しかし、僕の別の場合や他の医師なら、「直接死因欄」にただ「肺炎」と書いたかもしれません。最後は咽頭や気管支あたりでゴロゴロ音が聞こえるし、「肺炎」とすることが妥当~無難とする場合もありえます。)
これらの死亡診断書はいずれも受理されています。これらの書類内容が事実に近い場合は、その書類をみることになる遺族にとっても「心穏やかな気持ちをもつことができるもの」ということも自覚していました。ただ、こういう死亡診断書においても、統計処理としては「急性呼吸不全」「急性循環不全」や「急性肺炎」だけが死亡病名として使われるのだと思います。

コロナにおける、余談を載せておきます。
先ず、ロシアでコロナ死亡率が非常に少なかった理由に、政府筋が「別の病名にするように」という指令か圧力をかけていたことが一部に報じられています。その真偽は不明ですが、一般的には非常にありうることでしょう。中共政府の発表などはほとんど信用できない部分が大きいと思わない人は(ほぼ日本のマスコミだけがそういう姿勢である)知能指数的に問題があり、どうかしていると思います。

次に、国外では日本のコロナ死亡者数が少ないことを疑問に思う人が非常に多いらしい。中には、日本が死亡原因を改変しているのではないかという疑いを持っています。しかし、「死亡数自体が大して伸びていないので、日本のそのデーターは信用できる」という声明が米国の専門機関から表明されています。ただ、米国としては(自国の死亡率が高いので)それを認めるのは辛いらしいが、認めざるを得ないと述べたのです。

次に、細かい話かもしれませんが、肺炎になって死亡された人の中には、PCR検査をするとたまたま陽性であった人がいるとして、その人が全部コロナ肺炎であったとは実は限らないはずです。「他の原因の呼吸不全の人の中にたまたまコロナ感染もあった」ことは実際にあると思われます。COPD(肺気腫)や慢性の喘息の悪化や他の風邪症候群関連の肺炎などの悪化の場合です。しかし、この一般情勢の中でのこういう場合は「問答無用」の「コロナ死亡者」になっているはずです。

(注)このブログの投稿の半月後の2020年6月18日に、厚生労働省は「実際の死因には拘わらず、PCR検査陽性であった死亡者は、全員、コロナ死亡者として報告するように」という通達を全国自治体に出して、全国医師に伝えています。僕も、この通知を受けていましたが、これを知ったのは、2021年になってしばらくしてからです。この通達については、2021年5月30日のこのブログで議論しています。

次に、これはちゃんとした人がよく議論されていることですが、日本のコロナ死亡率は報道で記載されているよりもはるかに少ないということです。話は簡単です。コロナPCR検査をあまりしていないので、その計算値の分母の数が実際よりも非常に少ないので、計算値が桁違いに高くなっているはずということです。つまり、コロナ感染者の8~9割が無症状ということなので、これらの人々の実際の多くはPCR検査をする機会がないのです。ある日、すべての日本人のPCR検査をしたとしたら、コロナ感染陽性者数は物凄く増えていることが判るはずですので、それを母数にして本当の死亡率として計算すると、その値は今の発表より非常に少なくなるということです。
このブログで何度も述べてきましたように、コロナ死亡者率は日本ではせいぜいインフルと似たり寄ったりが明らかなはずです。インフルと同じ対応でどうして悪いのか理解できません。シャットダウンやロックダウンのような対策は「副作用」が激烈過ぎる。次第に日本の感染症専門家に腹立たしくなっています。そのうちに影響力のある誰かが「裸の王様」現象であることを表明する決意・度胸を持てばよいのにと思います。そうすれば、大きい賛否の議論が巻き上がろうというものです。僕のような巷間の人間が何度もこういう意見を書いても無力を感じているところです。仕方がないなあという思いです。しかし、書きたいから書いておりますので、その自由は有難いと思っています。









 

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